妊婦さんが歯科を受診する際の注意点!おすすめの受診時期は?
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「X線検査を受けたり麻酔を使ったりしなければならないから、妊娠中は歯科クリニックに行きたくない」と考えている妊婦さんはいないでしょうか。
「自分の歯が少しくらい悪くなるのは我慢できる。お腹のなかの赤ちゃんのために歯医者に行くのを我慢している」と思っている女性はいないでしょうか。
いずれも間違った考えです。
多くの歯医者が「痛みがなくても歯に違和感を持ったら、妊婦さんこそ早めに歯科受診しましょうと」とアドバイスしています。歯周病が早産のリスクを高める、という研究結果もあります。
――と、これだけ聞いても、妊婦さんの不安は解消できないと思います。そこで妊婦さんが歯科受診する際の注意点と、おすすめの受診時期を池田歯科が解説します。
歯周病が早産を引き起こすこともある
妊婦さんが歯科受診したほうがよい最大の理由は、歯周病が早産や低体重児出産の原因になり得るからです。
アメリカの歯周病の研究者たちが1996年に、歯周病の妊婦さんが早産と低体重児出産になるリスクは、歯周病でない妊婦さんより7倍高いという研究結果を発表したのです。
歯周病によって口のなかに炎症が生じると「炎症性物質」が分泌され陣痛を早めてしまうと考えられています。また、歯周病菌の影響で子宮が収縮し、そのことで早産になるという歯医者もいます。
だから、妊婦さんやこれから妊娠する方こそ、積極的に歯周病治療に取り組んだほうがいいのです。すなわち、歯医者を早めに受診しましょう。
妊婦さんは歯周病を発症しやすい
しかも妊婦さんは歯周病を発症しやすいのです。そのため「これまで歯周病になったことがない」という方も、妊娠したら注意が必要です。妊娠するとホルモンバランスが崩れ、それが唾液の分泌を抑制してしまうことがあるのです。唾液には滅菌作用があるので、唾液が減ると虫歯菌や歯周病菌にとって「住みやすい口のなか」になってしまうのです。
ホルモンバランスでいうと、妊娠すると女性ホルモンのエストロゲンが増えます。歯周病菌には、エストロゲンを栄養にする菌があるのです。妊娠するとそのタイプの歯周病菌が活性化してしまうのです。当然、歯周病の発症リスクが高まります。
おすすめの受診時期は悪阻(つわり)が終わった妊娠4カ月目以降
つわりがひどい方は、歯科クリニックへの通院はおろか、自宅での歯磨きですら難しい状態になるでしょう。その期間に通院する必要がありません。妊婦さんにおすすめしたい歯科受診タイミングは、つわりが終わった妊娠4カ月目ごろです。
そしてこの時期は、歯に異変を感じなくても受診してみてはいかがでしょうか。つわりのせいでブラッシングが十分できない場合、歯垢が歯石になってしまっているかもしれません。歯石は歯科クリニックでしか除去できませんし、歯石は歯周病を誘発します。
「X線検査や麻酔が心配」というお母さんへ
ほとんどの歯科医や産婦人科医は、歯科受診で行うX線撮影程度の放射線被ばく量なら、お腹の赤ちゃんに影響しないと考えています。むしろ「歯の健康は全身の体調に影響するので、歯に不具合を感じたら妊婦さんであろうと早期に歯科受診しましょう」と呼び掛けています。
また、歯科クリニックで使っているキシロカインという局所麻酔薬も、妊娠や出産や胎児に悪影響を及ぼさないと言われています。
愛知学院大学歯学部麻酔学講座の金澤真悠子氏と原田純氏は「妊婦・授乳婦への歯科局所麻酔薬投与について」という論文で「妊娠4カ月まではできれば局所麻酔は避けるほうがよいと思われるが、通常の歯科治療での使用量(カートリッジ2~3本分)では問題ないと思われる」と述べています。
論文はこちら( http://www.showayakuhinkako.co.jp/medical/odt/odt16.pdf )から全文を読むことができます。平易な文章で書かれてあるので、読みやすいと思います。
妊婦さんの治療に慣れている歯科クリニックや歯医者を探そう
ここまで読んでいただいて「歯科受診しよう」と思っていただいた妊婦さんに、もうひとつアドバイスがあります。それは「妊婦さんの治療に慣れている歯科クリニックや歯医者にかかったほうがいいでしょう」ということです。もちろんどの歯科医師も、妊婦さんの歯科受診の注意点を心得ています。しかし「気配り」や「心のケア」や「おもてなし」は、やはり得手不得手があるようです。
妊婦さんの治療を多く手掛けている歯医者さんの探し方は簡単です。Yahoo!やグーグルの検索で「〇〇県〇〇市(お住いの街)、妊婦、歯科受診」と入力するだけです。そこにヒットした歯科クリニックのホームページを閲覧して、妊婦さんに向けたメッセージがあるかどうか確認してください。例えばQ&A方式で「歯科受診をためらっている妊婦さん向けのアドバイス」があれば、「妊婦さんウェルカムなクリニック」であると推測できます。
歯科クリニックに電話をするのもおすすめです。「妊娠しているのですが、受診できますか」と尋ねて、電話に出た受け付けの方が体調を気づかってくれたり、「うちには妊婦さんの患者さんも多いんですよ」と安心させてくれる言葉をかけてくれたら期待できます。
まとめ~妊婦さんこそ歯医者の助けを借りよう
健康な赤ちゃんを産むためには、まずはお母さんのセルフケアが重要です。歯科受診も自分を守るひとつの手段です。だから妊婦さんこそ、歯医者の助けを借りてください。健康な歯で赤ちゃんに微笑んであげてください。