歯周病ケアが認知症予防につながる可能性
歯周病と認知症の深い関係
歯周病は進行すると歯を失う恐ろしい病気ですが、全身の様々な病気の原因にもなっていることが近年、次々にわかってきています。
認知症もそんな病気の一つとしてかつてより指摘されていましたが、つい最近、その詳しい仕組みが研究の結果明らかになり、歯周病ケアが認知症予防対策につながる可能性が高いとして、注目が高まっています。
歯周病がアルツハイマー型認知症を起こすメカニズムが明らかに
認知症を引き起こす原因にはいくつかありますが、そのうちで最も多いのが、アルツハイマー型認知症であり、認知症患者の約7割がこのタイプだと言われています。そして、このアルツハイマー型認知症と歯周病との間に深い関連があることが、かつてより専門家の間で指摘されてきました。
認知症の原因物質が脳に蓄積する仕組みを解明
アルツハイマー病は、アミロイドベータ(Aβ)などの異常なタンパク質が脳に蓄積し、それが健全な神経細胞にダメージを与えることで起こると考えられています。そして、このアミロイドベータ(Aβ)は、歯周病の原因菌やその毒素が血管内に入り込むことによっても作られる、ということがわかっており、しかしその一方でアミロイドベータ(Aβ)が脳に蓄積する仕組みについてはあまりよくわかっていませんでした。
ですが、今回、九州大学などの研究チームがマウスを用いた実験により、この蓄積のメカニズムが解明され、歯周病菌が認知症の原因物質の蓄積を加速させることが明らかになりました。
つまり、歯周病を治療したり、予防したりすることで、アルツハイマー型認知症の発症や進行を遅くできる可能性があるということがわかったのです。
歯周病菌を減らして認知症リスクを下げましょう!
高齢者社会の今、アルツハイマー型認知症は増加傾向にあり、現在500万人ほどと推定されています。そして、このまま行くと2025年には700万人にも達すると言われています。
歯周病菌はアルツハイマー型認知症の確実な危険因子となっていることがわかった今、歯周病に対して積極的に取り組んでいくことで、認知症リスクを大幅に下げられる可能性があります。
早い時期からの対策が必要です
アミロイドベータ(Aβ)が脳に蓄積し始めてから認知症を発症するまでには、だいたい25年かかると言われています。アルツハイマー型認知症を発症するのは70歳前後が多いため、逆算すると、遅くとも45歳くらいまでにはしっかりと対策を始めておく必要があります。
ただし、歯周病というのは進行性の病気であり、30前後くらいから発症する人も多いので、できるだけ早いうちから歯周病対策を始め、予防、または軽いうちに治療を始めることが大切です。
定期的な歯周病菌のコントロールが大事です
歯周病菌をお口の中から完全に無くしてしまうことはできません。歯周病菌は増えすぎると色々と問題を起こしてきますので、歯周病菌を増やさないよう、定期的にコントロールをしていくことが大事です。
当院では、認知症予防という目的以前に、大切な歯を守り、ご自分の歯で一生噛めるようにするために、定期的な検診とメインテナンスをお勧めしています。
定期検診では、歯茎の状態の検査、細菌の状態の検査等を行って、歯周病の状態を把握し、状態に合った治療を行います。具体的には、歯の周囲に溜まった歯石や歯垢を徹底的にクリーニングし、歯周病菌を減らすという根本的な治療を行います。
歯周病治療で健康寿命を延ばしましょう!
歯周病治療・予防により、認知症だけでなく、その他、関連が強いと言われている脳梗塞や動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎などの重大な全身的な病気のリスクを下げることもできます。また、最近では歯周病ケアをしっかりと行うことで様々なウイルス感染の予防につながることもわかってきています。
さらに、歯周病予防を実践することで歯の喪失を防ぐことができますので、しっかり噛める、噛み合わせが安定することで脳の活性化や体幹バランスを安定させることにもつながり、健康寿命を延ばすことにもつながります。
ぜひ、皆さんも歯周病治療でいつまでも健康なお口、体を目指しましょう!